ポリシー

IATSSフォーラム研修における方針

カリキュラムポリシー
(研修過程編成・実施の方針)

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研修過程の編成における方針

アジア諸国では、国際的な広い視野と高度な専門知識を基盤に、自国の課題を発見し、解決する意欲と能力を備え、自ら考え行動できる指導的役割を果たす人材が求められている。このような人材を提供するために、IATSSフォーラムでは、「共に学び共に考える」環境の元で、以下の5つの素養を兼ね備えたプロフェッショナル人材の育成に必要となる研修課程を配置する。

CP1リーダーシップと組織マネジメントに関する基礎力

リーダーシップとマネジメントに関する基本的な理解、状況に応じて効果的に発揮する為の基礎的な力

CP2学際的思考に基づく洞察力

諸問題を関連づける広い視野、分野をまたぎ多面的に問題を掘り下げ追及するための洞察力

CP3アイディア考案力

責任をもって人類社会の持続的・平和的発展に寄与しようとする強い意志と、具現化に向けたアイディアを考案する力

CP4コミュニケーション力(対話力、共感力、引き出す力)

人材力、チームの潜在力を最大限に引き出し、対話を通じた合意形成を基に共通目標の達成に向けて導いていく「共創型リーダー」に必要な思考・態度・対人力

CP5影響力・アイディアの具現化力

専門分野や所属組織、立場の違いを越え、多様な他者との協働・共創関係の中で、明快な理念やヴィジョンを示し、より良い変化の実現に向け行動する力

研修課程は、序盤、中盤、終盤に分けられており、序盤では、「体験型学習」、リーダー論に関する「講義・演習」を通じて、リーダーシップと組織マネジメントに関する基礎力、コミュニケーション力(対話力)を身につける。中盤では、多分野に亘る「セミナー」や「事例研究」を通じて、学際的思考に基づく洞察力、コミュニケーション力(共感力)を身につける。終盤では、それまでに身につけた能力を応用し、「グループ研究」を通じて、アイディア考案力、影響力、アイディア具体力、コミュニケーション力(引き出す力)を身につける。

研修過程の概要

IATSSフォーラムの研修課程は、基本教育プログラム群と応用教育プログラム群に構成されており、さらに基本教育プログラム群は「体験型学習・演習」、「セミナー」、応用教育プログラム群は「事例研究」、「グループ研究」で構成される。

「体験型学習・演習(6日間)」では、異質な他者や知と触れ合い、相互作用を基本的な対話により経験することで、リーダーシップと組織マネジメントに関する基礎力【CP1】コミュニケーション力(対話力)【CP4】を身につけることができる。「セミナー(6日間)」では、各専門分野における暗黙知の本質を概念的に表現される形式知に置き換えられるように深い討議・対話を行うことで、学際的思考に基づく洞察力【CP2】コミュニケーション力(対話力)【CP4】を身につけることができる。「事例研究(14日間)」では、各事例及びグループ構成員の異なる背景から得られた形式知を組み合わせてモデル化を行うことで個々人が責任をもって持続的・平和的発展に寄与するアイディア考案力【CP3】コミュニケーション力(共感力)【CP4】を身につけることができる。「グループ研究(7日間)」では、異なる集団下で共有された形式知を組み合わせてモデル化しつつ、専門分野や所属組織、立場の違いを越えて、明快なヴィジョンとともにより良い変化を起こすことのできる実行可能案を作成することにより、影響力・アイディアの具現化力【CP5】コミュニケーション力(引き出す力)【CP4】を身につけることができる。

研修課程の特徴

  • 講義のみでなく、事前調査、討議、グループ研究等の多様な学びの形態を通じて、主体的・創造的に学ぶ方法を体験させる。
  • 研修過程(講義、実地研修、発表・討議)の中で、分野や立場の違いによる対立軸を示すことで、自らの専門分野の知識に偏ることなく、多面的且つ柔軟な発想で考えられる人材を育成する。
  • 対象国の現状、ニーズに即したトピックを扱い、日本、及びアジア、世界の事例に触れることで、自国の課題への対応策のヒントを得る。
  • 実地訪問研修を重視し、五感で体験することで、気づきや学びをより深く自分のものにする。
  • 様々な分野で活躍する実践者の理念・ヴィジョン、及びそれらに基づく過去~現在までの行動に触れ、自身のリーダーシップ醸成への気づきを得る機会を提供する。
  • 専門分野、出身国、職業形態における多様性を確保し、多様性の環境下での、自己対峙や多様な他者との濃い関わりにより、自己成長への気づきを生む。
  • 自身のリーダースタイル把握と課題設定、多様性の環境下での実践、リフレクション(自己・他者)を繰り返させることでリーダーシップを涵養する
  • 討議での発言、発表、レポート作成を通して、意見やアイディアを多様な他者に伝える能力を身に着ける

カリキュラム前後を含めた全体編成の方針の具体案

来日前
  1. 来日前に事前課題が課される。課題テーマにおける自国の現状、特に重要課題とその対策について調査し、発表資料に纏める。 フォーラム担当者との事前のやり取りを通して資料の完成度を高める。
研修序盤
  1. 来日直後に合宿形式での体験型学習を実施する。様々なアクティビティを通して、自己・他者理解を深めると共に、研修を通して各々の自己開発が促進されるチームとしての基盤作りを行う。
  2. 研究者によるリーダー概論講義を通してリーダーシップの定義や主要理論、様々なリーダーシップの在り方について学ぶ。自身のリーダースタイルの把握、課題設定を行うと共に、研修を通してリーダーシップを探求していくための基礎理解を得る。
  3. 様々な職業形態、文化的背景を持つ各研修生が各々のリーダー経験を語るセッションを設ける。自身の経験を振り返り各自の研修目標を明確にすると共に、互いの経験を共有することで様々なリーダーの在り方を知り、研修を通して更に学び合うきっかけを得る。
研修中盤
  1. 多分野に亘るセミナーを実施する。セミナーは、1コマ2日間(又は1日)、「講義」「事前課題発表(アジア諸国の現状と課題)」 「グループ討議」で構成される。「講義」で示された一つのテーマにおけるいくつかの対立軸を念頭に、各国の課題についてあらゆる視点から捉え討議し、自らの専門分野の知識に偏ることなく、多面的且つ柔軟な発想で考える力を磨く。
  2. 「持続可能な発展」に関連する事例研究を行う。概論講義で持続可能な発展の指標となる国連の持続可能な開発目標とその他関連する国際的枠組みを理解した後、事例研究を通して、持続的発展の妨げとなる自然・人的災害に対する日本の対応を知り、環境と調和し、且つレジリエンスのある社会の構築について学ぶ。
    また、事例研究の後半では、安全・安心を柱とした日本式発展の事例研究を通じて、各ステークホルダーの過去~未来を見据えた取り組みや直面する課題のみでなく、成長・発展の機会として捉えた行動に触れ、自国の持続的発展へのアイディアを得る。
研修終盤
  1. 研修終盤では、講義、事例研究で得られた学びを基にグループ研究を行う。グループ研究は、研修の纏めとして位置付けられ、これまで学んだすべての要素を応用し、リーダーシップ、及びグループ毎に設定したテーマについて討議を重ね、成果物(発表資料及び、レポート)に纏める。また、このグループ研究活動のプロセスにおいては、次の2点が達成されるよう、講師及びスタッフによる必要に応じた働きかけを行い、プロセスの充実を図る。

    グループ研究プロセス
    • 6日間の討議で、研修コンテンツの「概念化」、アジア諸国の実情・実態に合わせて概念を応用し「モデル化」を行い、実行可能性の高い提案として纏めることで、持続可能な発展の具現化に向けたアイディアを考案する力を身に着ける
    • 専門分野、出身国、職業形態における多様性を考慮し決定されたグループにおいて、リーダー/フォロワーとして、チーム パフォーマンスの向上に貢献し、チームを発展させていく。このプロセスの中で自己・他者の実践、実践に対する(自己・ 他者による)リフレクション、課題設定を繰り返しスパイラルアップを図ることで、各々がリーダーとして必要な思考、態度、対人力を体得する。
  2. 来賓、講師、地域の方々に研修成果を発表する機会を設ける。発表に向けての準備のプロセスから他者への伝え方(情報の選択、見せ方、構成、話し方等)を学ぶ。
  3. 個人レポートを提出すると共に、成果発表会でレポートを基に個人発表を行う。テーマは「学んだことを応用し、自らの専門領域を組み合わせ、どのように共創的にアプローチしていくことができるか、その為に自分はどのようなリーダーシップを発揮していくのか」
帰国後
  1. グループ発表、及び個人レポートを基にした自国委員長への報告と、今後に向けての抱負を共有し、助言をもらう。
  2. 所属組織、地域、同窓会組織を通して、研修で得たアイディアを具現化し実社会で実践する。また、IATSSフォーラム研修、及び同窓会組織主催のセミナー等を通して、自身の知識・経験を後進に伝えることを通して、影響力・実行力を更に高めていく。

学びの定着確認

学びの定着化を図る為、上記研修プログラムに加え以下の機会を設定している。

  • 講義シラバスに基づく事前学習
  • 事例研究実施前のブリーフィング
  • 事例研究先での各テーマに基づく討議、討議結果に対する関係者からのフィードバック
  • 各セミナー、事例研究における個人レポートの提出